Nadja の日記
2016-01-04 05:05:10  日本が平和な理由

日本は世界にも類を見ないほど平和で安全な国である。特に戦後は表立って他国から侵略されることもなく、国内で何か大きな紛争が起こることもなく、近年のテロリズムの標的にもなりにくい。しかし、日本の治安維持能力、防衛能力、つまり軍事力は客観的に見てそれほど高くはない。兵器の調達だけみれば、確かに先進国とされる国々に引けを取らないものかもしれないが、兵力、及びその練度という観点で見れば、第二次大戦以降PKO以外の実戦経験がない自衛隊はお世辞にも実力が高いとはいえないと思う。にもかかわらず、日本は第二次大戦以降、ほぼ戦火というものと無縁な状態である。

これは不思議な話なようだが、そもそも戦争や内紛、テロというのはどういった国で起こるのか、というところを考えるなら、日本がそうした事態に見舞われないのは自然な成り行きなんだろうと感じられる。

まず、戦争、つまり、異なる国同士の争いというのはなぜ起こるかというと、2国以上の間で互いに利害が衝突した際に発生する、いわゆる自衛戦争、もしくは、他国の領土や利益などを一方的に奪う、いわゆる侵略戦争という、この2種類になると思う。ただ、その本質がどんなものであれ建前としては大抵の国は前者を主張するのであろうが。

日本にそういった要因があるかというと、実はそれほどない。いわゆる特定アジアとされる諸国との領土問題はありつつも、これは戦争にまで発展するほど大きな問題ではない。もちろん、領土問題というのは防衛に手を抜いていると付け込まれるものだから、お互いに譲れない国境を死守する防衛線を張る必要はある。このあたりは駆け引きであり、力のバランスを取って安定させるというものになる。言い方は悪いが、国境で小突きあってる程度のことは日常的なことで、それは戦争とはいえない。

日本が他国から攻撃される対象になり得るかと考えると、日本の領土に戦争してまで奪うべき魅力的な資源があるかというとそれほどでもないし、海洋資源もあるもののそれを得るには高い技術力とコストが必要になるし、あるといえば、中国が世界の覇権を狙うのに日本がとても邪魔な位置にあるというあたりが戦争勃発の最大の要因といえるだろうか。逆に日本が他国に打って出る理由は今のところ皆無なので、日本が主体的に戦争を始めることはまずない。

内紛はどうだろうか。これは内紛、国内紛争というものがどういうものであるかという定義にもよるが、国内の異なる勢力、多くの場合、宗教や思想の異なる民族同士がお互いの主張を押し通そうとして衝突するものだとするなら、まず日本人はほぼ単一民族である上に、宗教や思想への執着が薄い日本人同士の間でそうした争いが発生する火種はほとんどないといえる。

テロリズムはどうか。まずテロが発生するのはどういった国かというと、テロリストの攻撃対象となる何かがその国内にあることが条件だろう。では、テロリストは何を狙うかというと、自らの利益を妨害する何かを物理的に攻撃して押し通すということになるだろうか。テロが頻発している中東諸国などを見ると、その細かい理由は複雑で多岐に渡ると思うが、端的に言えば異なる思想や宗教を持つ民族同士の縄張り争いという面が大きい気がする。それに次ぐ理由は、かつての植民地政策や政治介入によって国内が攪乱されたことに対する現地諸国から西側諸国への復讐といったあたりか。その観点でも、日本国内は縄張り争いするような強い宗教や思想もないし、過去の列強のような植民地政策は行っていない。大東亜共栄圏の名の下に東アジアや東南アジアを委任統治したことはあるが、それ以前にそれらの領地はもともと列強や中国の植民地だった地域である。むしろ日本はそれらの植民地を現地人による統治に転換させたといえる。

つまり、日本は(中国以外の国にとって)魅力の薄い地理にあるし、特に大きな問題行動もしていないのでテロの標的にもなりにくい国であるといえると思う。ここまでは、日本が平和な理由としてわりと考えつくあたりか。

最近、上記に加えて感じているのは、戦争や国内紛争、及びテロが起こるのは、それほど強い信念を持つ民族が立ち上がることによるところが大きいという点で、その意味で今の日本人は我を通すより他人に譲る、言い方を変えれば人目を気にする性格であること、事を荒立てるというのを好まない民族性に依っているのではないかということ。特に戦後はGHQにより徹底して日本文化が否定され、変わって米国文化が大量に導入されてきている。そもそも明治時代以降、日本では西欧の文化が浸透しつつあったので米国文化が吸収されやすい素地はもともとあったわけだが、客観的に見て、今の日本国内の文化はほぼ米国のコピーのような状態といえるのではないか。

何が言いたいかというと、日本は独立国でありながら、事実上は米国の属国のような状態だといえるのではないかということ。あえて言わずともわりと指摘されることではあるけど、実際、日本の領土には今も米軍基地が点在し、領土や領空の一部は日本の国土でありながら米軍の管理下に置かれていたりする。日本は国防の一部を米軍に任せているともいえるが、見方を変えれば国土を米軍に委ねているともいえる。要は、日本は実質米国であり、現時点で世界の覇権を握っているのは米国なので、その米国の領土には安易に手を出せないという話かもしれない。そうみると、チベットやウイグルを一方的に自国領土に編入した中国でも(彼の国が日本を小国と評価しながらも)日本には簡単に手を出せない理由もそういうことだろうと。

テロが頻発する国、戦争や内紛がよく起こる国というのは、少なくともそれを起こす主体となる人達の信念が非常に強い。逆に信念が強くないとテロや戦争など起こそうという気にもならない。例えば、米国が自国の政治に介入するのを嫌ったりするのだろうけど、日本人はそういうことにわりと鈍感というか柔軟というか、受け入れてしまっている。極端な話、実質は属国だろうが占領だろうが、名目上国家として認められ(天皇がその象徴なんだね)、その上で日々を平和に過ごすことができるのであれば、それで十分満足しちゃってるのが日本という国であり、日本人なのかなと。

もっと複雑な話はあることは分かる。都合の良い国境線が引かれ、資源だけ西欧諸国に搾取され、経済的にも余裕のない国で暴動が起こる理由というのは推して知るべしだとは思うけどね。


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