Nadja の日記
2013-05-21 23:24:42  乙武さんが入店拒否されたお話

いろいろ思うところがあったので、何となく書いとこうかなと。

まず、今回の件につてのまとめ。

釣り解説"乙武洋匡さん、銀座の「TRATTORIA GANZO」に「車椅子だから」と入店拒否される"
(togetter.com)

タイトルがアレですが、これはまず元になったまとめ(togetter.com)があって、これが乙武さんサイドに偏った視点で書かれているために、これ釣りなんじゃね?っていう観点でメタ的に書かれたまとめだからっぽい。

とりあえずコトの顛末を端的に書くと、乙武さんが友人の女性と2人でとあるイタ飯屋に行ったところ、その店が手狭な雑居ビルの2階にありエレベータも止まらないという状況だったと。そこで店の人に頼んで乙武さん自身を店内まで運んでもらうようお願いしたところ、その店のオーナーはこれを拒否。その言い草が乙武さんの逆鱗に触れたらしく、そのことをTwitterで61万人のフォロワーに向けて、その店の名前を晒して非難ツイート。そして炎上。

これに関する乙武さん自身の釈明ブログがこちら。 

イタリアン入店拒否について
(ototake.com)

まずいっておくと、私自身は乙武さんに対して特に強いヘイト感情は持ってない。ときどき「リア充爆発しろ」とは思うけど、まぁその程度である(えっ?) あ、いや、別に嫌いではないですよと。特に彼が私にとって有害であるわけではないし。

で、この件の論点はいくつかあるけど、とりあえずTwitterなどで一番騒がれていることについて考えてみる。

オーナーが入店を拒否した理由

乙武さんが障害者だから、というのは間接的な理由。直接には、彼が障害者であるがゆえに車椅子で移動する必要があり、その車椅子での入店が不可能であったことが主な理由。店が2階ということもあり、彼が入店するためには、誰かが彼の体を抱えて店内へ運ぶ必要があり、彼の連れの女性はそれが不可能だった。必然的にホールスタッフがそれをすることになるのだけど、さて、その必要があったかという点で、その店のオーナーの判断が注目される。

オーナーによれば、車椅子であっても事前にそのことを伝えていればOKだった模様。ということは、事前連絡なしでも無理すれば不可能ではないとも思える。道義的には、運んであげたらいいでしょ、と感じるけど、小規模経営でホールスタッフも2名だけとのことで、タイミングも丁度週末の食事時ということで忙しく、事前準備なしのまま階段で転落事故が発生するリスクまで考えると、店(の責任者)としてそれを断るという判断も十分理にかなっている。

まぁぶっちゃけ、オーナーの感情的には「このクソ忙しいときに無理いうな」という部分もあったでしょうが。

乙武さんが怒った理由

これは、自分が障害者差別をうけたから、ということではないようで、主にそのオーナーの態度を問題にしている模様。釈明ブログの中でもなお「他人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべる店主」などと表現していることから、相当屈辱的な断り方をされたのかと感じられる。が、これは乙武さん主観の感じ方なので、客観的にみてどうだったかは定かでない。

流れとして、まず乙武さんの友人が店内までいって手伝いをお願いする。それから10分待っても誰も来なかったと。この時点で普通の人間としては少なからず不機嫌になったでしょう。もう一度友人がお願いしにいく。すると、「車いすのお客様は、事前にご連絡いただかないと対応できません」と。待たせた挙句それかい!とか思ったでしょう。きっと。私なら多分そう思うし。

なんかそのとき友人泣いてたとのことで、断られて残念で泣いてたのか強くいわれて泣いてたのかはわからないけど、とにかく乙武さんが怒りを覚えるのに十分な材料が揃ったと。泣くぐらいに頼み込まれた店側オーナーもちょっとキレ気味だったでしょうね。その後2人が対面。衝突不可避。

どうすれば良かったのか

じゃ、どうすればこの問題は回避されたか。その店としては、車椅子の場合は事前連絡が必要というルールがあった。つまり、乙武さんが車椅子であることを事前にいっておけば問題は発生しなかった。ところが乙武さんはそれをしなかった。ここがまず乙武さん側の問題1つ目。

次に、事前連絡なしでもお願いすれば入店できるはず、と考えていた乙武さん。彼によれば「こんなことは初めて」らしいので、過去の経験上、今回も当然入れるものという思い込みがあったのだろう。問題2つ目。

店も店で、事前連絡なしの客は速攻で断れば良かったのに、なぜ10分待たせたのか。急いで仕事すればわずかな余裕ができるとでも思ったか。しかし、結局、その努力も虚しく手は空かなかったということか。そうだとするなら、店側の見積もりミスだ。もしかすると、これはオーナーの判断ではなくスタッフの独断だったのかもしれない。それで、それに気付いたオーナーが「勝手なことをするな」と、自ら対応に出向いたのかもしれない。とりあえず、これは店側の問題。

本来なら事前連絡が必要な車椅子の客がそれをしなかった場合の扱い、それはどうあるべきか。他の客を待たせてでも、スタッフ総出で運ぶべきか。場合によっては、階段に何らかの安全措置が必要かもしれない。

人情としては、何とかして運ぶべき、なのだろうし、そこでそれをしないというオーナーの判断は冷たい、非情だとなる流れも予想できるが、これは問題ではない気がする。ここでルールを破っているのは乙武さん側なのだから。店がそういうルールを定めている以上は従う必要があるだろう。それを守るのが嫌なら、その店を利用しなければ良い。

例えば、身長が140cm以下の人は乗ることのできないジェットコースター、あれは別に低身長の人を差別してるわけではなく、それ以下だと安全ガードがしっかりかからないから、安全の為に設けているルール。危ないから乗せちゃダメなのだ。乱暴な例かもしれないけど、車椅子な人を運ぶ際の安全基準があるのかもしれないし、そんなリスクは犯さないというオーナーのポリシーがあるのかもしれないし。

今回の問題は

…という感じで、表面的な問題はいろいろあるけど、今回の一番の問題は、乙武さんがその店の名前を晒して「悲しい思いをした」などと発言したこと、だと思う。ここがきっと一番問題。

これがどういうことを引き起こしているかと考えると、まず直接的には、その店が特定された上でマイナスイメージがついてしまう。そういう行為を乙武さんという有名人がやったことで、いろんな店が障害者の受け入れに萎縮してしまう(最初から拒否するようになるかも)、ひいては障害者全体がそのような問題を起こす可能性があるという、障害者に対するマイナスイメージもついてしまう。乙武さんにその気がなくても、これが障害者を代表する言動だと受け取られかねないということ。

さすがに、乙武さん自身今は軽率だったと認めているようだけど、いっぺん発した言葉は取り戻せないのよね。そしてそれが一度ネット上に流れてしまうと、その情報は半永久的に残る。今時点でこの騒ぎを知らない人も、後からそういうことがあったということを知ることができてしまう。この取り消しは効かない。

その言葉によってついてしまった印象、イメージもまた同じで、弁明でいかにイメージ回復を図っても、一度ついてしまったマイナスイメージは可塑性を持っていて、元の(良好な方向の)イメージには完全に戻れない。あのお店はそういう店なんだな。乙武さんはあんなこという人なんだな。障害者ってやっぱりそう考えてるものなんだな。これは、店にとっても、乙武さん自身にとっても、障害者全体にとっても、良いことはひとつもない展開にしかならない。

乙武さんのブログを読んでみると、自分も失敗したと認めつつも、まだ不愉快だったという感情は完全には消えてなくて、その中ではこれが精一杯ギリギリの釈明なんだろうなぁ、と感じ取れる。まぁ、これが今の乙武さんにできる最善でしょうね。

これは乙武さんに限らず、おそらく全ての人にいえることで、特に有名人は、軽率な発言をネットでやっちゃうと、その影響はどんどん拡散していっちゃうよってお話。

恵まれた環境であるが故

ところで、乙武さんは、これまで飲食店に車椅子で事前連絡なしにいっても困ることはなかった、といっていることから、障害者に対しては常にその手のサポートがあるのが当然である、という感覚がある気がする。これは、彼の周囲がすごく良い人ばかりで、常に誰かのサポートを受けられる状態が続いているという証左かもしれない。彼の普段の言動からして、彼に対する辛辣な誹謗中傷も少なくないと思うんだけど、それらも良い人バリアに護られて、多分彼に直接響いていないんじゃないかなぁ。だからいつもあんなに元気なんじゃないか。

これは、普通には理解できない感覚だけど、例えば、普段当たり前に使えると思っている電気。それが止まると一気に不便を強いられるようになり、人は「電力会社は何やってるんだ!」と文句を言い始める。乙武さんにとって、周囲のサポートというのは、この普段は当たり前に使える電気の存在に近いものがあるのかもしれないな、とも思ったり。

改めて、乙武さん、リア充乙!


この記事へのコメント
RORO
(2013-05-22 14:06:04)
某国家ですら、アメリカの上院で、我が国を批判する時、名指しはしない^^;
つまり、そういうこと。

概ね、同意ですが、乙武さん、謝り方も良くなかったですねぇ。
私は、彼の精一杯がこれなんだろうなって思いましたけど、殆どの人は、もっと辛辣ですから。
いやぁ、損しましたねぇ。乙武さん。
月影
(2013-05-22 20:09:49)
感情的になった自分をいかに制御できるかというあたりも、有名人であるがゆえの課題かもしれませんねぇ。一般人が同じことをツイートしたところで、何の騒ぎにもなりませんしね。

コメントの書き込み
名前
内容

(左の文字列を入力)