Nadja の日記
2012-06-05 00:11:37  IT系の仕事が在宅にできないワケ

私が社会に出たのは14年前の話。当時はPCのOSにWindows95が普及してOSR2でようやくインターネットにつながりWebというものが普及し始めた時代でした。WebブラウザもまだNetscapeが活躍していて、その裏でMSがOSにIE3.0をバンドルしてActiveXを推しはじめていた頃。ITというものが世の中の商品となりつつあることを予感しつつも、まだまだペーパーレスとまではいかずオフィスで仕事せざるを得ないインフラ環境だったわけですが。

そんな時代でも、IT技術が日々急速に発達していることは肌で感じることはできていて、これはそのうちPCやネットが普及しきった暁には、もうみんなわざわざ満員電車にゆられてオフィスへ出かけたりする必要もなくなり、在宅で仕事ができるようになるんじゃないかなどと、わりと現実味を帯びて将来の展望をしたものです。

ところがどっこいしょ。今の状況を見るに、ほとんど全くあの当時と変わらない仕事風景が続いている。つまり、みんな朝9時くらいまでに出勤し、コアタイム働いて夕方5時くらいに終業(この際残業は考えないとして)という日々のサイクル。これは一体どうしたことか。

ITインフラがまだそこまでになってないのかといえば、それはもう在宅勤務なんか余裕で可能なレベルにまで修熟していますよ。もう無線でも100Mbpsを超える速度で通信できますし、PCもノートでさえマルチコアを標準搭載する時代です。物理的には十分在宅で仕事することはできるんです。

では、何が問題なのか。

もうこれはある程度この業界で仕事している人間ならイヤというほど知らしめられてることだと思いますが、“情報セキュリティ”なんぞという壁がどーんと立ちはだかっておるわけです。ISMSとか、そういうやつです。つまり、IT系の仕事というのは概ねその機密性を保つことが求められているわけで、下手にそれが外に漏れては会社の信用問題に発展します。情報というのは一度外に漏れだしたらそれを回収することができません。出てしまったものは戻ってこない上に情報コピーによる拡散速度も速くその追跡は事実上不可能です。それはその後永遠に悪用されるリスクとなり続ける。そういった危険性を企業としてはなるべく負いたくないわけです。

仕事をネット経由でやるとなると、会社と社員(或いは契約した協力者)との間はインターネットでつなぐことになる。インターネットは公衆回線なので、その気になれば誰でもそのデータを拾って中身を見ることができるわけです。そういったことを防ぐために今はSSLやTLSなど暗号化技術も発達してなかなか破られないようになったとはいえ、それが最終的に誰かが開けて見ることを前提とした鍵である以上100%破られないということはない。それだけの労力をかけて解読するかしないかというだけで、常に数%程度漏洩のリスクをはらんでいるということ。そして、日本企業の多くはそこを非常に心配している。

まぁネットワークが破られるリスクだけでなく、在宅で仕事する人間がしょうもないミスを犯す(個人情報の入ったPCを電車に忘れるとか!Winnyなどでドライブ共有しちゃうとか!)可能性も否定できず、むしろそっちのリスクの方が高いわけですけどね。とにかく、在宅勤務にはそうしたセキュリティ上の懸念が満載であるために、日本企業の多くは、その会社規模が大きくなればなるほど採用しない、怖くてそれができない傾向があるということ。

面倒くさいです。ホント。オフィスにいてもIDカードが手放せないとか、ほんの10年前は考えられなかったんだけど、今じゃどの会社でも(IT系会社でなくても)わりと当たり前のことになってます。

悪意を持っているクラッカーというより、内部の間抜け社員のためのセキュリティって面の方が大きいんじゃないかと感じる昨今ですが、今度はそんな間抜けを何とか減らす技術が発達して欲しいもんですよ。


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